頭頸部疾患について
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当院は開院時より悪性腫瘍等の早期発見のために出血を伴なう止血が必要な外科的処置や精密検査を行ってきました。そのため処置や検査の種類によっては前処置や後処置に充分な時間を要します。その点充分にご理解ください。
(個人的には医師は信頼してくれている限り患者さんの希望を取り戻すことがもっとも大切な仕事だと思います。実務としては全身どこのどんな勢いの血も止めることは大切な医師の仕事のひとつだとおもいます。
外科の歴史で、はるか昔から術野も含め止血する方法はいくらでもあります。但しどれだけ大きな手術などの医療行為をしても医師が患者さんにできることはほんのわずかなことだけです。)
頭頸部の悪性腫瘍でも、特に咽喉頭・口腔・鼻副鼻腔や中耳粘膜や、外耳道など皮膚原発の腫瘍は、原発巣が非常に小さい状態で診断することは極めて困難です。事実、頭頸部癌の方はそのほとんどが進行癌でみつかることが大多数です。それは現代医学の限界でもあります。(今後もそれはどんなに検査機器が進化したとしても変化はないと個人的にはおもいます。)たとえば中咽頭癌の大部分を占める扁桃癌は先に首の大きなリンパ節が目立つほどに腫れていて全身を内視鏡などでくまなく調べても原発が不明であることから、のちに一見きれいにみえる扁桃をまるごと摘出してようやくその扁桃の一部にごくごく小さな原発となる癌がみつかることがあります。それでも頭頸部のリンパ節転移は、全身をくまなく徹底的に調べても原発が不明なことがあります。
その癌は原発不明癌と呼ばれます。その他甲状腺、耳下腺、顎下腺、くびのリンパ節転移や悪性リンパ腫は視触診での早期発見は、まず困難です。早期の場合には画像検査で大きさを測定して増大傾向や内部性状に変化があるかなど画像検査で定期フォロー、FNAを行う必要があります。当院には画像検査の装置が無いため、必要に応じて画像検索をお勧めしています。)
その他当科では開院以来、長くのどのいたみが続く方には、耳鼻科では内視鏡でみることができない食道の病変を調べるために、内科や外科での上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)をお勧めしております。口頭での注意喚起では、その旨をお忘れになる方もいるため、印刷物でその旨をお渡しするようにしました。
当院に来られる方は県外の方も含めて慢性的なのどのいたみで来院される方がとても多いため、お一人お一人ごとに内科や外科の先生に胃カメラの内視鏡検査のための紹介状のご用意をすることは(その作業をすることは業務過多により当院スタッフの方の健康を損なうため)現実的には困難であるため、口頭以外に印刷物での注意喚起をさせていただいております。その点充分にご理解ください。
<長年にわたり頭頸部癌の手術治療をされてきた浅野勝士先生の手術治療の臨床論文が近年発表されております。>
きっと世界のどこかの患者さんや医療従事者の方の勇気につながるとぼくは思います。
下咽頭癌の局所進行癌も含めた頚部外切開による発声機能温存手術のまとめについて
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhnc/46/4/46_354/_pdf/-char/ja
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhnc/39/1/39_48/_pdf/-char/ja
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当院は開院時より悪性腫瘍等の早期発見のために出血を伴なう止血が必要な外科的処置や精密検査を行ってきました。そのため処置や検査の種類によっては前処置や後処置に充分な時間を要します。その点充分にご理解ください。
(個人的には医師は信頼してくれている限り患者さんの希望を取り戻すことがもっとも大切な仕事だと思います。実務としては全身どこのどんな勢いの血も止めることは大切な医師の仕事のひとつだとおもいます。
外科の歴史で、はるか昔から術野も含め止血する方法はいくらでもあります。但しどれだけ大きな手術などの医療行為をしても医師が患者さんにできることはほんのわずかなことだけです。)
頭頸部の悪性腫瘍でも、特に咽喉頭・口腔・鼻副鼻腔や中耳粘膜や、外耳道など皮膚原発の腫瘍は、原発巣が非常に小さい状態で診断することは極めて困難です。事実、頭頸部癌の方はそのほとんどが進行癌でみつかることが大多数です。それは現代医学の限界でもあります。(今後もそれはどんなに検査機器が進化したとしても変化はないと個人的にはおもいます。)たとえば中咽頭癌の大部分を占める扁桃癌は先に首の大きなリンパ節が目立つほどに腫れていて全身を内視鏡などでくまなく調べても原発が不明であることから、のちに一見きれいにみえる扁桃をまるごと摘出してようやくその扁桃の一部にごくごく小さな原発となる癌がみつかることがあります。それでも頭頸部のリンパ節転移は、全身をくまなく徹底的に調べても原発が不明なことがあります。
その癌は原発不明癌と呼ばれます。その他甲状腺、耳下腺、顎下腺、くびのリンパ節転移や悪性リンパ腫は視触診での早期発見は、まず困難です。早期の場合には画像検査で大きさを測定して増大傾向や内部性状に変化があるかなど画像検査で定期フォロー、FNAを行う必要があります。当院には画像検査の装置が無いため、必要に応じて画像検索をお勧めしています。)
その他当科では開院以来、長くのどのいたみが続く方には、耳鼻科では内視鏡でみることができない食道の病変を調べるために、内科や外科での上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)をお勧めしております。口頭での注意喚起では、その旨をお忘れになる方もいるため、印刷物でその旨をお渡しするようにしました。
当院に来られる方は県外の方も含めて慢性的なのどのいたみで来院される方がとても多いため、お一人お一人ごとに内科や外科の先生に胃カメラの内視鏡検査のための紹介状のご用意をすることは(その作業をすることは業務過多により当院スタッフの方の健康を損なうため)現実的には困難であるため、口頭以外に印刷物での注意喚起をさせていただいております。その点充分にご理解ください。
<長年にわたり頭頸部癌の手術治療をされてきた浅野勝士先生の手術治療の臨床論文が近年発表されております。>
きっと世界のどこかの患者さんや医療従事者の方の勇気につながるとぼくは思います。
下咽頭癌の局所進行癌も含めた頚部外切開による発声機能温存手術のまとめについて
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhnc/46/4/46_354/_pdf/-char/ja
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhnc/39/1/39_48/_pdf/-char/ja
喉頭癌の頚部外切開による発声機能温存手術のまとめについて
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhnc/47/4/47_371/_pdf/-char/ja
[過去に浅野先生が発表された論文や講演も技術的な切除限界を超える内容で、どこかの患者さんや医療従事者の方の勇気につながると思いますのでこちらに一部を掲載します。]
動脈再建症例の検討論文では、1988年11月から1994年6月までの間に頸動脈等の大血管に腫瘍の浸潤を認め従来手術の適応外とされてきた27症例について切除再建のまとめられています。 1995
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhnc1974/21/1/21_1_143/_article/-char/ja/
海綿静脈洞、特に内頸動脈に浸潤した頭頸部悪性腫瘍症例の手術経験 1998
中頭蓋底切除における技術的限界について
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi1954/44/4Supplement2/44_565/_pdf/-char/ja
頭蓋底進展を認めた中耳扁平上皮癌の側頭骨一塊切除術 1997
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka1947/100/7/100_7_782/_pdf/-char/ja
手術:頭 蓋底切除(どこまで切除可能か)従来踏み込むことが困難であった限界を超えるための議論を浅野先生や当時癌研の鎌田先生らがされています。1998
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi1954/44/4Supplement2/44_582/_pdf/-char/ja
今のわたしは、耳鼻科のことやその他耳鼻科以外の他科のこともお困りであればできるだけ治療できるように工夫を日々試行錯誤しておりますが、わたしの治療の専門は恩師の浅野勝士先生が行われてきた頭蓋底から縦隔内までの固形癌に対する手術 (切除・再建) と敗血症やDICなど全身状態の管理のアシストです。
ひょっとすると、日本のどこかのがんの患者さんの役に 立てるかもしれないので、一度頭頸部癌について浅野先生や多くの頭頸部がんの患者さんに教えていただき取り組んできた治療における考えなどを、お伝えします。 もともと 進行例で見つかることが多い頭頸部癌の治療方法は、日本でも診療のガイドラインというものもあるのですが、複雑な解剖部位で進行例でみつかることが多い頭頭部癌の診療を一般化させることはなかなか困難であり、 施設により考え方や治療方針に違いがあります。 しかし、どの施設の考え方や方針が正しい、正しくないというものではありません。 あくまでも治療の上で一番大切なことは、患者さんと医師との信頼関係です。 以下に代表的な疾患について記載します。
1. 喉頭癌
喫煙男性に多く頭頸部の中では、最も頻度が高いです。 声帯自体にできると比較的早期に声のかすれで見つかることもあり、またリンパ節への転移も少なく、予後は比較的良好です。 根治性を最優先としながら積極的に発声機能を温存する喉頭部分切除を行ってきました。 発声機能を犠牲にする喉頭全摘は適応をしぼって限られた症例に対して行っていました。 しかし、原発の腫瘍が声帯よりも少し上であったり下であったりするだけで、声の枯れなどの症状が初期は全く出ないことと、リンパ節転移が多い為、予後が不利になります。 局所が経気管的に胸にある縦隔の方に進展していった 場合には、積極的に縦隔気管孔を作成して、根治切除を目指します。
2.副鼻腔癌(主には上顎癌)
慢性副鼻腔炎の長期化や内反性乳頭腫などが原因となることがあります。 どの癌の治療でも、あくまでも病気を治すことが最重要ですが、社会復帰のことを考え、さらに整容面も考えた治療が重要となります。 そのため、手術として上顎全摘と腫瘍を栄養する動脈にカテーテルを入れて直接的な抗がん剤の治療を行い、放射線治療も組み合わせます。 眼球を温存することを目指します。
3.上咽頭癌
EB ウィルスというウィルスや民族地域性との関連があります。 頭頸部癌の中では珍しく放射線治療と抗がん剤 が非常に効果的な癌です。 しかし一生のうちに同一部分にかけられる放射線の量は決まっています。 そのため上咽頭がんに対する手術治療は放射線治療と抗がん剤治療で制御できない場合の救済目的に行います。 (追加して治すくらいまでの量の放 射線をかけることが困難であるため) この場合の手術は頭蓋底手術となります。
4.鼻腔癌
主に嗅神経芽細胞腫で、 前頭蓋底手術を行っていました。 その大きな理由は小さくても内頭蓋底の鶏冠と いう尖った部分のところの処理が必要になることが多いからです。 硬膜切除の場合には髄液の漏れが起こらない ように再建をします。 その他稀ですが、鼻の前の方(鼻前庭)や鼻中隔(鼻の仕切り)に癌ができることもあります。 この場合には扁平上皮癌であることが多い です。 鼻前庭の場合には、社会復帰のために整容面で十分な工夫(顔面の皮膚のシワに沿った局所皮弁による再建) を要します。
[甲状腺や耳下腺顎下腺などの内分・外分泌臓器、 そしてリンパ節は直接目で見えない部分であるため、 わた しの経験上触診で小さいから問題はないとは言い切れず、症状の経過から判断して画像検査をお勧めしております。 ]
5. 甲状腺癌
他の頭頸部癌よりもおとなしいことが多いですが、 初回手術でしっかり治療することと、術後の顕微鏡検査での分化度が重要です。
分化癌や低分化癌においては、 気管食道、 頸動脈、 腕頭動脈、 縦隔など局所浸潤が強かったり、上大静脈など への腫瘍塞栓などがあっても積極的に切除や、腫瘍塞栓の摘出を行うことで、良好な結果を期待できます。 低分化癌は、拡大切除で局所の制御はできても、遠隔臓器への転移先が制御困難な場合もあります。
極めて悪性度の高い未分化癌に関しては、 可及的早期の手術による肉眼的な完全切除と、術後早期の追加治療を組み合わせることで救命できる可能性があります。
6.耳下腺癌、顎下腺癌
良性の腫瘍が多く、悪性の頻度は少ないですが、さまざまなタイプがあります。
比較的おとなしいタイプと、攻撃的なタイプなどがあり、 それは手術をしてとったものの顕微鏡検査で悪性度で決まります。 術後の病理結果で悪性度が高いものは、手術治療後に、傷の治りと体力が落ち着いてから追加で放射線や抗がん剤治療を組み合わせることを検討します。 なお放射線は一生のうちに一定の部分に対して使える量に制限があるため、治療に関しては慎重に必要性を考え、 選択的に行うようにしておりました。
耳下腺の再発例に関しては、頭蓋底への浸潤も多く、積極的に救済手術を行っていました。 顔面神経に関しては腫瘍の浸潤により合併切除をすることがあります。 腫瘍切除による欠損部が大きい場合には、広背筋など血流 の豊富な筋肉とともに、脚にある腓骨神経という感覚神経を採取して移植することで、表情をつくる筋肉の緊張を保ち 整容面にも対応するようにしておりました。
7. 中咽頭癌
喫煙・飲酒、ヒトパピローマウィルスが関連します。 中咽頭癌は、下咽頭癌とは異なりリンパ節転移の状況よ りも、局所制御が予後に重要です。 中咽頭局所は、 解剖的に複雑な部分である為、 また完全切除のためには、腫瘍の進展範囲を手術中に完全に明視下 に置くために、局所進行癌では積極的に下顎骨の離断を行ってきました。 これにより、 術前の画像検査だけでは分かりづらい進展範囲の評価を手術中に行い、腫瘍の進展範囲に応じて積極的に下顎骨も合併切除し、下顎骨は肩甲骨などを 用いて再建します。 舌根部(舌の付け根)に関しては特にのみこみに影響する為、残存した機能を引き出すように再建を行う必 要があります。 舌根部を大きく取る必要がある場合には必ず誤嚥する為、発声機能の温存はできない為、(発声機能を残すと、声帯の隙間から唾液や食べ物がどんどん肺に入ってしまいます)舌喉頭全摘となります。 それくらいに舌根部は嚥下において重要な役目を果たしています。(喉頭蓋は、よく、嚥下の際空気の通り道に食 塊が入らない為に蓋(フタ)をする為にあると、便宜上説明されますが、 喉頭蓋は現実には切除しても嚥下に大きな問題はなく、 舌根部の方が蓋をする役割としては重要です。)
8. 舌癌
以前は喫煙と飲酒歴の多い方に多かったですが、今は若年者でもみられることが多くなってきました。 それは 内向性の歯(歯が内側に向いてはえていて、舌の横側を慢性的に刺激している) が原因です。 10代 20代の 若年層の方も注意が必要です。 内向性の歯が増えてきた背景には食事の時に噛む回数が現代人は減って下顎が小さい 方が増えて来たことも関係します。 解剖的には先ほどの中咽頭との関連も強い(舌の付け根は先ほどの中咽頭前壁と呼ばれます)です。 リンパ節転移の頻度の多い攻撃的なタイプと、比較的おとなしいタイプがあります。
9.聴器癌 (外耳道癌、中耳癌 )
外耳道癌と中耳癌があります。 外耳道癌は耳掃除が習慣になっている方に発症します。 中耳癌は慢性中耳炎によ るものが多いです。 しかし両者とも頻度は少ないですが、 進行癌でみつかることが多いです。 外耳道癌の早期のものは、比較的小規模な手術で治療可能ですが、多くは進行癌で発見される為、側頭骨の大部 分、つまり内頸動脈とS状静脈のみ残して、 その他の側頭骨を腫瘍が露出しないようにさせながら顔面神経も含め て硬い骨ごと摘出する必要が多いです。(側頭骨亜全摘: 中頭蓋底手術) この場合には欠損部分が大きく顔面神経を切除するので、遊離広背筋と腓腹神経を移植させて再建します。 必要 に応じて硬膜に関しては、 合併切除します。 (硬膜自体が硬いので、 腫瘍の頭蓋内進展に対するバリアとなってく れていると、 術中の所見では感じることが多いです。) 中耳については頭蓋内の内頸動脈やS状静脈などの再建まで要することも多いですが外耳道癌と比べると制 御困難の場合があります。 手術自体は技術的に可能であっても、治し難い癌のひとつです。
10. 頸部転移癌(原発不明癌を含む)の頸動脈や腕頭動脈など大血管への浸潤
頭頸部癌や食道癌、その他骨盤内や腹部の癌が首のリンパ節転移などを起こして頸動脈や腕頭動脈などに浸潤 することがあり、その大きな血管の合併切除が必要になる場合があります。 これらは最終的に脳に血液を送る血管である為、基本的にとりっぱなしにはできないので、切除後に即時再建を必要とし ます。 (バルーンオクルージョンテストという検査を術前にして、切除血管を一時遮断して残りの血管で脳血流が保たれるかの検査を行いますが、基本的には血管の即時再建を要します。)
再建に関しては脳血流量の低下の危険を考え、末梢側と中枢側の血管を360度剥離させてブルドック鉗子 などで血行遮断を行って切除後、血管の縫合に関しては、強い動脈の圧力で漏れが無く、なお且つ狭くなり血流 が途絶えることの無いように適切に縫合させ速やかに行う必要があります。 (速やかにしないと脳梗塞の危険性が出てくるためです)
再建材料に関して頸動脈は、 ダクロン(人工血管)を切除範囲の大きさにあわせて用いることや、頭側と足側で は血管径が異なるので、状況にあわせ太ももにある大伏在静脈を採取して再建します。 腕頭動脈は、 頸動脈と鎖骨下動脈に枝分かれしますが、腕頭動脈用の専用のY字型のグラフトが世界で販売されていないので、 大腿動脈用のダクロンをいくつかの径をあらかじめ用意しておいて対応します。 鎖骨下動脈の分枝からの出血は 慎重な対応が必要です。 Y字型なのでつなぐ血管が多いですが、 頭蓋内への血流の遮断時間を最低限に抑えて連やかに正確に血管縫合を行います。 このように重要血管に浸潤した場合も積極的に切除再建を行ってきました。
11. 下咽頭癌
飲酒・喫煙が原因の大部分ですが、稀に貧血が原因でおこることがあります。 耳鼻科の代表的ながんであり且つ耳鼻科が治療する癌の中でも食道癌に次ぐ悪性度の高いがんです。 局所の進行度よりも、転移リンパ節の個数が予後に影響を与えます。 3個が境界です。 あくまでも病気自体を治 すことを最優先項目とした上で、積極的に局所は機能温存を行い、声を残しながら、術中腫瘍の進展範囲に応じ て、手術方法を切り替えることができる頸部外切開による手術治療を行っておりました。 欠損部が大きい場合の再建は、 遊離空腸を用いる施設が多いですが全身状態への配慮と術後の回復の速さを優先 させ、必要に応じて追加治療を速やかに行える状況にする為、また耳鼻科単独で行えて手術時間の短縮にも繋が る為、前腕皮弁(腕の皮膚)を用いていました。 なお、腕の皮膚の欠損部は大きいのでギュッと縫い縮めることは不可能なので、脚 の皮膚をうすく採取してタイオーバーで腕の皮膚の欠損部に固定させ生着させます。 脚の皮膚はうすく採取する のでこちらは自然に上皮化してきてくれます。
12.食道癌(頸部食道癌・頚胸境界部食道癌など)
飲酒が原因となります。 送気装置のない耳鼻科のカメラ (全世界共通です) ではみえないので診断は内 科の胃カメラで発見されて耳鼻科に紹介され治療は耳鼻科で行います。
頚部食道癌や頚胸境界部食道癌は珍しい癌ですが、 のどの痛みやつまり感を感じられる方には、当院では開院以来上記の理由のため内科で胃カメラをすることをお勧めしております。 食道癌は消化器癌の中でも悪性度が非常に高いです。 その中でも難治性である頚胸境界部食道癌や、 縦隔リンパ節転移の気管浸潤などに対しては気管合併切除後に縦隔気管孔の作 成を行います。 左右の肺の間にある隙間である縦隔郭清が重要となりますが、 縦隔には心臓や大動脈、 気管などの生命に直接 的に関わる臓器があり、これら臓器にリンパ節が浸潤している場合もあります。 腫瘍を取り残しては手術本来の意味が無いため、合併切除を行います。 気管浸潤の場合には、 気管も合併切除し、 一時的に胸に縦隔気管孔という空気の通り道をつくります。 気管と皮膚を縫い付けますが、その時に緊張がかか る状態だと血流が乏しくなり周りにある大きな血管に負担がかかるので、同時に血流が豊富で感染に強い背中の 筋肉を移植して大きな血管との間に滑り込ませます。この筋肉自体は、細い血管で酸素と栄養がまかなわれているので、その小さな血管の動脈と静脈それぞれを顕微鏡で、信頼のある首の血管にちゃんと血液が通れる様、狭くならないように、また漏れないように血管縫合します。肺に関しては、胸膜が腫瘍浸潤のバリアとなってくれるため、胸膜の合併切除までで済むことが多いです。
13.その他(悪性リンパ腫など)
首のリンパ節や扁桃、鼻、全身のどこにでもできる血液内科の病気である悪性リンパ腫という病気があります。 これは耳鼻科の範囲で直接目で見ることができる皮膚や粘膜の部分については生検などで検査を行いますが、直接目で見えない部分、つまり首のリンパ節などについては画像検索が必要なので、また経験上リンパ節は小さくても大丈夫とはいいきれ ないため、画像検査などの検査をお勧めしております。 こちらの治療は治療目的としては手術は無効なので、血液内科で主に抗癌剤による治療を行います。
最後にぼくが演者として発表した内容をまとめておきます。
2009年
第200回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
✴︎舌根部に認めたclear cell carcinomaの一例
2010年
第72回 日本耳鼻咽喉科臨床学会
✴︎舌根部に認めたclear cell carcinomaの一例
第201回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
✴︎耳下腺内リンパ節転移を来した原発不明悪性黒色腫の一例
2011年
第202回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
✴︎腐食性咽頭喉頭食道炎の再建例
第37回 北海道頭頸部腫瘍研究会
第203回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
第35回 日本頭頸部癌学会
✴︎披裂に腫瘍浸潤を認めた喉頭癌・下咽頭癌に対する喉頭温存手術3例
第204回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
✴︎最近経験した外耳道癌の2例
2012年
第38回 北海道頭頸部腫瘍研究会
第205回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
第36回 日本頭頸部癌学会
✴︎気管合併切除を施行した甲状腺癌46症例の検討
第206回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
✴︎上大静脈内に腫瘍塞栓を伴う縦隔浸潤甲状腺癌の一例
2013年
第114回 日本耳鼻咽喉科学会 総会
✴︎中咽頭癌 手術症例の検討
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhnc/47/4/47_371/_pdf/-char/ja
[過去に浅野先生が発表された論文や講演も技術的な切除限界を超える内容で、どこかの患者さんや医療従事者の方の勇気につながると思いますのでこちらに一部を掲載します。]
動脈再建症例の検討論文では、1988年11月から1994年6月までの間に頸動脈等の大血管に腫瘍の浸潤を認め従来手術の適応外とされてきた27症例について切除再建のまとめられています。 1995
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhnc1974/21/1/21_1_143/_article/-char/ja/
海綿静脈洞、特に内頸動脈に浸潤した頭頸部悪性腫瘍症例の手術経験 1998
中頭蓋底切除における技術的限界について
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi1954/44/4Supplement2/44_565/_pdf/-char/ja
頭蓋底進展を認めた中耳扁平上皮癌の側頭骨一塊切除術 1997
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka1947/100/7/100_7_782/_pdf/-char/ja
手術:頭 蓋底切除(どこまで切除可能か)従来踏み込むことが困難であった限界を超えるための議論を浅野先生や当時癌研の鎌田先生らがされています。1998
✴︎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi1954/44/4Supplement2/44_582/_pdf/-char/ja
今のわたしは、耳鼻科のことやその他耳鼻科以外の他科のこともお困りであればできるだけ治療できるように工夫を日々試行錯誤しておりますが、わたしの治療の専門は恩師の浅野勝士先生が行われてきた頭蓋底から縦隔内までの固形癌に対する手術 (切除・再建) と敗血症やDICなど全身状態の管理のアシストです。
ひょっとすると、日本のどこかのがんの患者さんの役に 立てるかもしれないので、一度頭頸部癌について浅野先生や多くの頭頸部がんの患者さんに教えていただき取り組んできた治療における考えなどを、お伝えします。 もともと 進行例で見つかることが多い頭頸部癌の治療方法は、日本でも診療のガイドラインというものもあるのですが、複雑な解剖部位で進行例でみつかることが多い頭頭部癌の診療を一般化させることはなかなか困難であり、 施設により考え方や治療方針に違いがあります。 しかし、どの施設の考え方や方針が正しい、正しくないというものではありません。 あくまでも治療の上で一番大切なことは、患者さんと医師との信頼関係です。 以下に代表的な疾患について記載します。
1. 喉頭癌
喫煙男性に多く頭頸部の中では、最も頻度が高いです。 声帯自体にできると比較的早期に声のかすれで見つかることもあり、またリンパ節への転移も少なく、予後は比較的良好です。 根治性を最優先としながら積極的に発声機能を温存する喉頭部分切除を行ってきました。 発声機能を犠牲にする喉頭全摘は適応をしぼって限られた症例に対して行っていました。 しかし、原発の腫瘍が声帯よりも少し上であったり下であったりするだけで、声の枯れなどの症状が初期は全く出ないことと、リンパ節転移が多い為、予後が不利になります。 局所が経気管的に胸にある縦隔の方に進展していった 場合には、積極的に縦隔気管孔を作成して、根治切除を目指します。
2.副鼻腔癌(主には上顎癌)
慢性副鼻腔炎の長期化や内反性乳頭腫などが原因となることがあります。 どの癌の治療でも、あくまでも病気を治すことが最重要ですが、社会復帰のことを考え、さらに整容面も考えた治療が重要となります。 そのため、手術として上顎全摘と腫瘍を栄養する動脈にカテーテルを入れて直接的な抗がん剤の治療を行い、放射線治療も組み合わせます。 眼球を温存することを目指します。
3.上咽頭癌
EB ウィルスというウィルスや民族地域性との関連があります。 頭頸部癌の中では珍しく放射線治療と抗がん剤 が非常に効果的な癌です。 しかし一生のうちに同一部分にかけられる放射線の量は決まっています。 そのため上咽頭がんに対する手術治療は放射線治療と抗がん剤治療で制御できない場合の救済目的に行います。 (追加して治すくらいまでの量の放 射線をかけることが困難であるため) この場合の手術は頭蓋底手術となります。
4.鼻腔癌
主に嗅神経芽細胞腫で、 前頭蓋底手術を行っていました。 その大きな理由は小さくても内頭蓋底の鶏冠と いう尖った部分のところの処理が必要になることが多いからです。 硬膜切除の場合には髄液の漏れが起こらない ように再建をします。 その他稀ですが、鼻の前の方(鼻前庭)や鼻中隔(鼻の仕切り)に癌ができることもあります。 この場合には扁平上皮癌であることが多い です。 鼻前庭の場合には、社会復帰のために整容面で十分な工夫(顔面の皮膚のシワに沿った局所皮弁による再建) を要します。
[甲状腺や耳下腺顎下腺などの内分・外分泌臓器、 そしてリンパ節は直接目で見えない部分であるため、 わた しの経験上触診で小さいから問題はないとは言い切れず、症状の経過から判断して画像検査をお勧めしております。 ]
5. 甲状腺癌
他の頭頸部癌よりもおとなしいことが多いですが、 初回手術でしっかり治療することと、術後の顕微鏡検査での分化度が重要です。
分化癌や低分化癌においては、 気管食道、 頸動脈、 腕頭動脈、 縦隔など局所浸潤が強かったり、上大静脈など への腫瘍塞栓などがあっても積極的に切除や、腫瘍塞栓の摘出を行うことで、良好な結果を期待できます。 低分化癌は、拡大切除で局所の制御はできても、遠隔臓器への転移先が制御困難な場合もあります。
極めて悪性度の高い未分化癌に関しては、 可及的早期の手術による肉眼的な完全切除と、術後早期の追加治療を組み合わせることで救命できる可能性があります。
6.耳下腺癌、顎下腺癌
良性の腫瘍が多く、悪性の頻度は少ないですが、さまざまなタイプがあります。
比較的おとなしいタイプと、攻撃的なタイプなどがあり、 それは手術をしてとったものの顕微鏡検査で悪性度で決まります。 術後の病理結果で悪性度が高いものは、手術治療後に、傷の治りと体力が落ち着いてから追加で放射線や抗がん剤治療を組み合わせることを検討します。 なお放射線は一生のうちに一定の部分に対して使える量に制限があるため、治療に関しては慎重に必要性を考え、 選択的に行うようにしておりました。
耳下腺の再発例に関しては、頭蓋底への浸潤も多く、積極的に救済手術を行っていました。 顔面神経に関しては腫瘍の浸潤により合併切除をすることがあります。 腫瘍切除による欠損部が大きい場合には、広背筋など血流 の豊富な筋肉とともに、脚にある腓骨神経という感覚神経を採取して移植することで、表情をつくる筋肉の緊張を保ち 整容面にも対応するようにしておりました。
7. 中咽頭癌
喫煙・飲酒、ヒトパピローマウィルスが関連します。 中咽頭癌は、下咽頭癌とは異なりリンパ節転移の状況よ りも、局所制御が予後に重要です。 中咽頭局所は、 解剖的に複雑な部分である為、 また完全切除のためには、腫瘍の進展範囲を手術中に完全に明視下 に置くために、局所進行癌では積極的に下顎骨の離断を行ってきました。 これにより、 術前の画像検査だけでは分かりづらい進展範囲の評価を手術中に行い、腫瘍の進展範囲に応じて積極的に下顎骨も合併切除し、下顎骨は肩甲骨などを 用いて再建します。 舌根部(舌の付け根)に関しては特にのみこみに影響する為、残存した機能を引き出すように再建を行う必 要があります。 舌根部を大きく取る必要がある場合には必ず誤嚥する為、発声機能の温存はできない為、(発声機能を残すと、声帯の隙間から唾液や食べ物がどんどん肺に入ってしまいます)舌喉頭全摘となります。 それくらいに舌根部は嚥下において重要な役目を果たしています。(喉頭蓋は、よく、嚥下の際空気の通り道に食 塊が入らない為に蓋(フタ)をする為にあると、便宜上説明されますが、 喉頭蓋は現実には切除しても嚥下に大きな問題はなく、 舌根部の方が蓋をする役割としては重要です。)
8. 舌癌
以前は喫煙と飲酒歴の多い方に多かったですが、今は若年者でもみられることが多くなってきました。 それは 内向性の歯(歯が内側に向いてはえていて、舌の横側を慢性的に刺激している) が原因です。 10代 20代の 若年層の方も注意が必要です。 内向性の歯が増えてきた背景には食事の時に噛む回数が現代人は減って下顎が小さい 方が増えて来たことも関係します。 解剖的には先ほどの中咽頭との関連も強い(舌の付け根は先ほどの中咽頭前壁と呼ばれます)です。 リンパ節転移の頻度の多い攻撃的なタイプと、比較的おとなしいタイプがあります。
9.聴器癌 (外耳道癌、中耳癌 )
外耳道癌と中耳癌があります。 外耳道癌は耳掃除が習慣になっている方に発症します。 中耳癌は慢性中耳炎によ るものが多いです。 しかし両者とも頻度は少ないですが、 進行癌でみつかることが多いです。 外耳道癌の早期のものは、比較的小規模な手術で治療可能ですが、多くは進行癌で発見される為、側頭骨の大部 分、つまり内頸動脈とS状静脈のみ残して、 その他の側頭骨を腫瘍が露出しないようにさせながら顔面神経も含め て硬い骨ごと摘出する必要が多いです。(側頭骨亜全摘: 中頭蓋底手術) この場合には欠損部分が大きく顔面神経を切除するので、遊離広背筋と腓腹神経を移植させて再建します。 必要 に応じて硬膜に関しては、 合併切除します。 (硬膜自体が硬いので、 腫瘍の頭蓋内進展に対するバリアとなってく れていると、 術中の所見では感じることが多いです。) 中耳については頭蓋内の内頸動脈やS状静脈などの再建まで要することも多いですが外耳道癌と比べると制 御困難の場合があります。 手術自体は技術的に可能であっても、治し難い癌のひとつです。
10. 頸部転移癌(原発不明癌を含む)の頸動脈や腕頭動脈など大血管への浸潤
頭頸部癌や食道癌、その他骨盤内や腹部の癌が首のリンパ節転移などを起こして頸動脈や腕頭動脈などに浸潤 することがあり、その大きな血管の合併切除が必要になる場合があります。 これらは最終的に脳に血液を送る血管である為、基本的にとりっぱなしにはできないので、切除後に即時再建を必要とし ます。 (バルーンオクルージョンテストという検査を術前にして、切除血管を一時遮断して残りの血管で脳血流が保たれるかの検査を行いますが、基本的には血管の即時再建を要します。)
再建に関しては脳血流量の低下の危険を考え、末梢側と中枢側の血管を360度剥離させてブルドック鉗子 などで血行遮断を行って切除後、血管の縫合に関しては、強い動脈の圧力で漏れが無く、なお且つ狭くなり血流 が途絶えることの無いように適切に縫合させ速やかに行う必要があります。 (速やかにしないと脳梗塞の危険性が出てくるためです)
再建材料に関して頸動脈は、 ダクロン(人工血管)を切除範囲の大きさにあわせて用いることや、頭側と足側で は血管径が異なるので、状況にあわせ太ももにある大伏在静脈を採取して再建します。 腕頭動脈は、 頸動脈と鎖骨下動脈に枝分かれしますが、腕頭動脈用の専用のY字型のグラフトが世界で販売されていないので、 大腿動脈用のダクロンをいくつかの径をあらかじめ用意しておいて対応します。 鎖骨下動脈の分枝からの出血は 慎重な対応が必要です。 Y字型なのでつなぐ血管が多いですが、 頭蓋内への血流の遮断時間を最低限に抑えて連やかに正確に血管縫合を行います。 このように重要血管に浸潤した場合も積極的に切除再建を行ってきました。
11. 下咽頭癌
飲酒・喫煙が原因の大部分ですが、稀に貧血が原因でおこることがあります。 耳鼻科の代表的ながんであり且つ耳鼻科が治療する癌の中でも食道癌に次ぐ悪性度の高いがんです。 局所の進行度よりも、転移リンパ節の個数が予後に影響を与えます。 3個が境界です。 あくまでも病気自体を治 すことを最優先項目とした上で、積極的に局所は機能温存を行い、声を残しながら、術中腫瘍の進展範囲に応じ て、手術方法を切り替えることができる頸部外切開による手術治療を行っておりました。 欠損部が大きい場合の再建は、 遊離空腸を用いる施設が多いですが全身状態への配慮と術後の回復の速さを優先 させ、必要に応じて追加治療を速やかに行える状況にする為、また耳鼻科単独で行えて手術時間の短縮にも繋が る為、前腕皮弁(腕の皮膚)を用いていました。 なお、腕の皮膚の欠損部は大きいのでギュッと縫い縮めることは不可能なので、脚 の皮膚をうすく採取してタイオーバーで腕の皮膚の欠損部に固定させ生着させます。 脚の皮膚はうすく採取する のでこちらは自然に上皮化してきてくれます。
12.食道癌(頸部食道癌・頚胸境界部食道癌など)
飲酒が原因となります。 送気装置のない耳鼻科のカメラ (全世界共通です) ではみえないので診断は内 科の胃カメラで発見されて耳鼻科に紹介され治療は耳鼻科で行います。
頚部食道癌や頚胸境界部食道癌は珍しい癌ですが、 のどの痛みやつまり感を感じられる方には、当院では開院以来上記の理由のため内科で胃カメラをすることをお勧めしております。 食道癌は消化器癌の中でも悪性度が非常に高いです。 その中でも難治性である頚胸境界部食道癌や、 縦隔リンパ節転移の気管浸潤などに対しては気管合併切除後に縦隔気管孔の作 成を行います。 左右の肺の間にある隙間である縦隔郭清が重要となりますが、 縦隔には心臓や大動脈、 気管などの生命に直接 的に関わる臓器があり、これら臓器にリンパ節が浸潤している場合もあります。 腫瘍を取り残しては手術本来の意味が無いため、合併切除を行います。 気管浸潤の場合には、 気管も合併切除し、 一時的に胸に縦隔気管孔という空気の通り道をつくります。 気管と皮膚を縫い付けますが、その時に緊張がかか る状態だと血流が乏しくなり周りにある大きな血管に負担がかかるので、同時に血流が豊富で感染に強い背中の 筋肉を移植して大きな血管との間に滑り込ませます。この筋肉自体は、細い血管で酸素と栄養がまかなわれているので、その小さな血管の動脈と静脈それぞれを顕微鏡で、信頼のある首の血管にちゃんと血液が通れる様、狭くならないように、また漏れないように血管縫合します。肺に関しては、胸膜が腫瘍浸潤のバリアとなってくれるため、胸膜の合併切除までで済むことが多いです。
13.その他(悪性リンパ腫など)
首のリンパ節や扁桃、鼻、全身のどこにでもできる血液内科の病気である悪性リンパ腫という病気があります。 これは耳鼻科の範囲で直接目で見ることができる皮膚や粘膜の部分については生検などで検査を行いますが、直接目で見えない部分、つまり首のリンパ節などについては画像検索が必要なので、また経験上リンパ節は小さくても大丈夫とはいいきれ ないため、画像検査などの検査をお勧めしております。 こちらの治療は治療目的としては手術は無効なので、血液内科で主に抗癌剤による治療を行います。
最後にぼくが演者として発表した内容をまとめておきます。
2009年
第200回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
✴︎舌根部に認めたclear cell carcinomaの一例
2010年
第72回 日本耳鼻咽喉科臨床学会
✴︎舌根部に認めたclear cell carcinomaの一例
第201回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
✴︎耳下腺内リンパ節転移を来した原発不明悪性黒色腫の一例
2011年
第202回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
✴︎腐食性咽頭喉頭食道炎の再建例
第37回 北海道頭頸部腫瘍研究会
第203回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
第35回 日本頭頸部癌学会
✴︎披裂に腫瘍浸潤を認めた喉頭癌・下咽頭癌に対する喉頭温存手術3例
第204回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
✴︎最近経験した外耳道癌の2例
2012年
第38回 北海道頭頸部腫瘍研究会
第205回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
第36回 日本頭頸部癌学会
✴︎気管合併切除を施行した甲状腺癌46症例の検討
第206回 日本耳鼻咽喉科学会北海道地方部会
✴︎上大静脈内に腫瘍塞栓を伴う縦隔浸潤甲状腺癌の一例
2013年
第114回 日本耳鼻咽喉科学会 総会
✴︎中咽頭癌 手術症例の検討